ローン・パーティシペーションの会計処理の基礎

ローン・パーティシペーションとは、金融機関等からの貸出債権に係る権利義務関係を移転させずに、貸出債権に係る経済的利益とリスクを貸出債権の原債権者かローンパーティシペーションの参加者に移転させることを目的とする取引いいます(会計制度委員会報告第3号ローン・パーティシペーションの会計処理及び表示第2項参照)。

すなわち、対象となる貸出債権の債権者とローン・パーティシペーションの参加者との2者の契約により、債権者が債務者から元利金などの金銭を受け取る権利をローン・パーティシペーションの参加者に売却し、参加者はその対価として債権者に金銭を支払うことになります(貸出債権に係る経済的利益を債権者から参加者へと移転させます)。また参加者への金銭の支払いは、債権者が債務者から金銭を受け取った場合のみに限定することにより、債権回収に関するリスクも債権者から参加者へと移転します(結果として債権を売却したのと同様の効果が得られます。ただし貸出債権の権利関係は移転していませんので、参加者が債務者から金銭を直接回収することはできません)。

ローン・パーティシペーションは従来は、リスクと経済的利益のほとんどすべてが譲渡人から参加者へ移転していることなどを条件として、一括して債権を譲渡したものとして処理されていました(会計制度委員会報告第3号ローンパーティシペーションの会計処理及び表示第4項以下参照)。

ただし現行の金融商品会計に関する会計基準は、金融資産の譲渡については財務構成要素アプローチが採用されており、財務構成要素アプローチのもとでローン・パーティシペーションのようにいわゆる条件付の金融資産の譲渡については、ローン・パーティシペーションを構成する金融資産を財務構成要素に分解し、そのうち支配が他に移転したと認められる財務構成要素についてはその消滅を認識し、移転したと認められない財務構成要素(留保される財務構成要素)についてはその存続を認識する処理が求められることになります(金融商品に関する会計基準第8項以下、第58・59項等参照)。

しかしローン・パーティシペーションは、我が国の商慣行上、債権譲渡に際して債務者の承諾を得ることが困難な場合の債権譲渡に代わる債権流動化の手法として広く利用されており、このような実情を考慮し、債権に係るリスクと経済的利益のほとんどすべてが譲渡人から譲受人に移転している場合等一定の要件を充たすものに限り、債権者は一括して債権の消滅を認識する処理(リスク・経済価値アプローチ)を認めることとされています(金融商品に関する会計基準第42項参照)。

(具体例-ローンパーティシペーション)

4月1日に、保有する貸出債権100,000円(年利2%、回収期限は翌年3月31日であり、1年分の利息と一緒に現金で回収する)についてローン・パーティシペーション契約を締結し98,000円でこれを売却した(売却代金は現金で受け取った)。また、譲渡人は参加者より元利金支払時において300円の事務手数料を徴収し、これを差し引いた金額を現金で支払うものとする。
譲渡人の金融商品会計基準42項に規定する経過処置(リスク・経済価値アプローチ)に基づいた以下の時点における仕訳を示しなさい。

1.ローン・パーティシペーション契約締結時
2.元利金の決済時(債務者からの回収時と参加者への支払時とに分けて回答すること)

1.ローン・パーティシペーション契約締結時の仕訳
(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
現金 98,000 貸出金 100,000
債権売却損 2,000
2.元利金の決済時の仕訳

参加者への元利金の決済に関しては、原債務者からの元利金の回収と参加者への元利金の支払いとのタイムラグを考慮した場合、仕訳は以下のようになります。

(仕訳-債務者からの回収時)
借方 金額 貸方 金額
現金 102,000 未払金 102,000
(仕訳-参加者への支払時)
借方 金額 貸方 金額
未払金 102,000 現金 101,700
受取手数料 300

(関連項目)
現先取引の仕訳の基礎
デット・アサンプションの仕訳の基礎

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