現先取引の仕訳の基礎

現先取引とは、公社債などの債券を、将来の一定の日に買い戻す(または売りも戻す)ことを事前に決めておき、この条件のもとで債券を売買する取引をいいます。
売買された債券はいったんは売手から買手に移動しますが、将来の一定の日に買い戻す(または売り戻す)条件が付いているため、その将来の一定の日には、当初の売手から買手に再び移動することになります。

現先取引は、短期資金を調達したいと考えている売手と余剰資金を短期的に運用したいと考えている買手との間で行われる取引であり、売手は債券を一時的に売却することにより短期資金を調達することができ、買手は債券を一時的に所有することにより債券の利息など債券の運用益を得ることができます。

現先取引は、形式上は債券の売買の形をとりますが、金融商品会計基準第9項(3)に定める金融商品の消滅(会計上において、金融商品の所有権が売手から買手に移ったと認められる)条件『譲渡人が譲渡した金融資産を当該金融資産の満期日前に買戻す権利及び義務を実質的に有していないこと』を満たさないため、会計上は有価証券の売買として取り扱うことはできません。
したがって、現先取引は金融取引(資金取引)として処理することが必要となります(金融商品会計に関する実務指針第129項参照)ので、売手は債券の売却として処理するのではなく資金の借り入れ取引として処理することになり、買手は債券の購入ではなく、資金の貸付取引として処理することになります。

・売手:資金の借り入れであり『借入金』として処理
・買手:資金の貸付であり『貸付金』として処理

(具体例-現先取引)

A社はB社に対し、額面10,000円(@100円で100口。なお年利3.65%であり、利払日は毎年12月31日)の債券を4月1日に@97.5円で売却し、代金は現金で受け取った。なお当該有価証券は満期日前の7月10日に@98円でA社がB社から買い戻す条件であり、7月10日にA社がB社から現金で買い戻した。

4月1日および7月10日における売手A社と買手B社の仕訳をそれぞれ示しなさい。

1.4月1日の仕訳

(解説)
A社がB社に手持ちの債券を売却していますが、満期日前の7月10日に買い戻す条件が付いているため、金融商品会計基準第9項(3)の金融資産の消滅の認識条件を満たしません。したがってこの取引は金融取引(資金の貸借取引)として処理することになります。
なお形式上は債券の売買であり、端数利息のやり取りがあるため、金額の算定には注意が必要となります。

(計算過程)
債券本体の売買金額:@97.5円×100口=9,750円
端数利息:額面(@100円×100口)×年利3.65%×日割(31日+28日+31日)/365日=90円
貸付金(借入金)の金額:債券の売買価額9,750円+端数利息90円=9,840円

(仕訳-A社(売り手側))
借方 金額 貸方 金額
現金 9,840 借入金(現先) 9,840
(仕訳-B社(買い手側))
借方 金額 貸方 金額
貸付金(現先) 9,840 現金 9,840

現先取引は債券の売買ではなく、資金取引(お金の貸し借り)として処理します。
なお、上記の『借入金(現先)』『貸付金(現先)』などは、『現先貸付金』『現先借入金』などの勘定科目を使う場合もあります(試験問題などの場合は問の指示に従ってください)。

2.7月10日の仕訳

(解説)
事前に取り決めた買い戻し条件にしたがい、A社がB社から満期日前に債券を買い戻しています。現先取引は金融取引として処理するため、これは借入金の返済であるものとして処理することになります。
また上記4月1日の仕訳と同様、形式上は債券の売買ですので、端数利息のやり取りがあるため、金額の算定には注意が必要となります(当初貸付金計上額と売買金額との差額は『支払利息』『受取利息』として損益処理します。決算をまたぐ場合は繰延・見越処理がひつようとなります)。

(計算過程)
債券本体の売買金額:@98.0円×100口=9,800円
端数利息:額面(@100円×100口)×年利3.65%×日割(29日+31日+30日+10日)/365日=100円
損益金額:債券の売買価額9,800円+端数利息100円-当初計上額9,840円=60円

(仕訳-A社(売り手側))
借方 金額 貸方 金額
借入金(現先) 9,840 現金 9,900
支払利息 60
(仕訳-B社(買い手側))
借方 金額 貸方 金額
現金 9,900 貸付金(現先) 9,840
受取利息 60

(関連項目)
ローン・パーティシペーションの会計処理の基礎

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