有価証券の貸し借り(消費貸借の場合)の仕訳

会社が保有する有価証券を他者に貸し付けたり、あるいは借り入れを行うことがあります。

有価証券の貸借が消費貸借契約の場合、貸手は借手に有価証券を売却又は担保という方法で自由に処分できる権利を与え、貸手の有価証券の使用を拘束することになるため、貸手は有価証券を貸し付けている旨及び貸借対照表価額を注記します。また、当該有価証券については、貸し付ける直前の有価証券の保有目的区分に従った評価及び会計処理を継続します。

いっぽう借手は、借り入れた有価証券を売却又は担保という方法で自由に処分できる権利を有することから、売却により受入処理を行ったものを除き、自己保有部分と担保差入部分とに区分し、その旨及び貸借対照表日の時価を注記します。なお、借手が売却した場合、『保管有価証券』の発生と同時に消滅の認識を行います(金融商品会計に関する実務指針第26項、第77項参照)。

(具体例-有価証券の消費貸借)

A社(貸手)はB社(借手)に保有する有価証券を貸し付け(消費貸借)を行った。B社は消費貸借契約により、当該有価証券の売却又は再担保という自由処分権を有するものとする。下記の時点におけるA社(貸手)とB社(借手)の仕訳を示しなさい。

(1) 2月20日 A社はB社に保有する有価証券(売買目的有価証券として区分しており、帳簿価額200,000円である)を貸し付け、有価証券及び現金担保200,000円の受け渡しを行った。
(2) 3月31日(決算日)における上記の有価証券の時価は210,000円であった。
(3) 7月21日 B社は、上記の有価証券を第三者に215,000円で売却し、代金を現金で受け取った。
(4) 11月25日 B社は、借入有価証券を返還するため、上記有価証券と同一銘柄の有価証券を230,000円で買い付け、代金は現金で支払った。
(5) 11月30日 B社は、A社に有価証券の返却をおこなった。

(貸手-A社の仕訳)

1.2月20日受渡日の仕訳

(仕訳-受渡日)
借方 金額 貸方 金額
現金 200,000 借入金 200,000

A社は現金担保200,000円を受け入れてますのでこれを『借入金』として記帳します。有価証券に関する記帳は必要はありません。

2.3月31日決算日の仕訳

(仕訳-受渡日)
借方 金額 貸方 金額
有価証券 10,000 有価証券運用益 10,000

貸手は貸付有価証券について、貸し付ける直前の有価証券の保有目的区分に従った評価及び会計処理を継続します。したがって売買目的有価証券に分類されている当該有価証券の時価評価を行い、評価差額は当期の損益とします。
また有価証券の貸手は、貸し付けた有価証券の使用が拘束されているため、その旨及び貸借対照表価額を注記することが必要となります。

3.7月21日売却日の仕訳

(仕訳-売却日)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし

借手が当該有価証券を売却した仕訳は貸手の取引ではありませんので記帳は必要ありません。

4.11月25日購入日の仕訳

(仕訳-購入日)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし

借手が当該有価証券を購入した仕訳は貸手の取引ではありませんので記帳は必要ありません。

4.11月30日返還日の仕訳

(仕訳-返還日)
借方 金額 貸方 金額
借入金 200,000 現金 200,000

有価証券が返却されると同時に貸手は借手に対し現金担保の返却を行いますので『借入金』を減少させます。

(借手-B社の仕訳)

1.2月20日受渡日の仕訳

(仕訳-受渡日)
借方 金額 貸方 金額
貸付金 200,000 現金 200,000

B社は現金担保200,000円を支払ってますのでこれを『貸付金』として記帳します。有価証券に関する記帳は必要はありません。

2.3月31日決算日の仕訳

(仕訳-受渡日)
借方 金額 貸方 金額
仕訳なし

借り入れている有価証券はオフバランスとなっていますので評価に関する仕訳は必要はありません。
なお有価証券の借手は、借り入れた有価証券について売却又は再担保という方法で自由に処分できる権利を有するため、その旨及び貸借対照表日の時価を注記することになります。

3.7月21日売却日の仕訳

(仕訳-売却日)
借方 金額 貸方 金額
保管有価証券 215,000 売却借入有価証券 215,000
現金 215,000 保管有価証券 215,000

借手が借り入れている有価証券の売却を行った場合、売却価額(時価)をもって『保管有価証券』の発生と同時に消滅の認識を行います(なお『売却借入有価証券』がオンバランスされるため、以後注記は不要です)。

4.11月25日購入日の仕訳

(仕訳-購入日)
借方 金額 貸方 金額
有価証券 230,000 現金 230,000

借手が貸手に返却するために購入した有価証券を取得原価で計上します。

5.11月30日返還日の仕訳

(仕訳-返還日)
借方 金額 貸方 金額
売却借入有価証券 215,000 有価証券 230,000
有価証券運用損 15,000
現金 200,000 貸付金 200,000

返却した『売却借入有価証券』と『有価証券』勘定との差額は当期の損益として計上します。
また有価証券の返却により現金担保の返還を受けますので『貸付金』を減少させます。

(関連項目)
差入有価証券・預かり有価証券の仕訳

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