在外支店の財務諸表項目の換算手順(順番)
支店が海外にある場合において、在外支店の財務諸表項目がドルやユーロなどの外貨で表示されている場合、本支店合併財務諸表を作成するにあたり在外支店の財務諸表項目(決算整理後残高試算表)を外貨建てから円建てに換算する必要があります(在外支店の財務諸表項目の換算レートの詳細は在外支店の財務諸表項目の換算方法をご参照ください)。
なお在外支店の財務諸表項目を換算する場合、換算手順に注意が必要となります。在外支店の財務諸表項目の換算手順は以下のような流れとなります。
1.まず外貨建貸借対照表の資産負債を換算し(本店勘定は本店の支店勘定の円貨額と同額とします)、この換算の結果生じた貸借差額より円貨の当期純利益(または当期純損失)を算定します。
2.貸借対照表から求められた円貨の当期純利益を損益計算書に移し、これを損益計算書の円貨による当期純利益とします。 3.いっぽう損益計算書項目の収益費用を換算します(当期純利益は貸借対照表の当期純利益を引き継ぐため、貸借対照表の円貨額と同額です)。 4.損益計算書の貸借差額(収益と費用+当期純利益との差額)は為替差損益とし、損益計算書の貸借合計を一致させます。 |
下記の具体例をもとに、在外支店の財務諸表項目の換算手順をご確認ください。
(具体例-支店の財務諸表項目の換算)
当社のアメリカ支店のドル建て決算整理後残高試算表は以下の通りである。資料をもとに、アメリカ支店の円建ての貸借対照表及び損益計算書を作成しなさい(財務諸表項目の換算方法は原則的な方法によるものとする)。
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
現金 | 2,000 | 本店 | 3,000 |
繰越商品 | 3,000 | - | - |
仕入 | 4,000 | 売上 | 16,000 |
本店仕入 | 10,000 | - | - |
(適用レート)
・期首商品棚卸高は0ドルであり、また当期の外部仕入れは一括して行われ、外部仕入時のレートは1ドル=110円(HR)あった(なお期末商品在庫はすべて外部仕入商品である)。
・売上は一括して行われ、売上時のレートは1ドル=108円(HR)であった。
・本店における支店勘定の残高は303,000円、支店売上勘定の残高は990,000円であった。
・当期の期中平均レート(AR)は105円であった。
・当期期末のレート(CR)は100円であった。
1.貸借対照表の作成
在外支店の財務諸表項目の換算手順としては、先に貸借対照表項目の換算を行います。この設問では原則的な換算方法(本店と同様の方法)によりますので、原則として貨幣項目はCR、非貨幣項目はHRで換算を行います(だだし本店勘定は、のちに本店の支店勘定と相殺するため、金額を一致させておくことが必要です。換算レートの詳細は在外支店の財務諸表項目の換算方法をご参照ください)
(計算過程)
現金:2,000ドル×100円=200,000円
繰越商品:3,000ドル×110円=330,000円
本店:303,000円(本店の支店勘定と同額)
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
現金 | 200,000 | 本店 | 303,000 |
繰越商品 | 330,000 | 当期純利益 | 227,000 |
在外支店の円建て貸借対照表の貸借差額より、当期の円建ての当期純利益227,000円(=200,000円+330,000円-303,000円)が算定されます。貸借対照表より算定された円建て当期純利益はそのまま損益計算書に移し、これを損益計算書上の当期純利益とします。
2.損益計算書の作成
次に損益計算書項目の換算を行います。換算方法は原則的な方法(本店と同様の方法)によりますので、売上や仕入などの外貨建て取引はHRにより換算します(だだし本店仕入勘定は、のちに本店の支店売上勘定と相殺するため、金額を一致させておくことが必要です)。
(計算過程)
仕入(売上原価):4,000ドル×110円=440,000円(期首商品や期末商品のHRが異なる場合はこれらを円換算後に売上原価を算定してください)。
売上:16,000ドル×108円=1,728,000円
本店仕入:990,000円(本店の支店売上勘定と同額)
当期純利益:227,000円(円建て貸借対照表の当期純利益と同額)
勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
売上原価 | 440,000 | 売上 | 1,728,000 |
本店仕入 | 990,000 | - | - |
為替差損益 | 71,000 | - | - |
当期純利益 | 227,000 | - | - |
在外支店の円建て損益計算書の当期純利益は、円建ての貸借対照表から移してきますので貸借対照表の当期純利益と同額です。また売上や仕入などの外貨建取引はそれぞれ取引発生時のレート(HR)等を使って換算します。この結果生じた貸借差額(上記の場合は71,000円)は為替差損益として処理します。
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