保険差益・未決算・火災損失(固定資産滅失時)の仕訳

機械や建物などの固定資産が火事や地震などの災害により使えなくなったり消滅することを滅失といいます。
滅失した固定資産に関する会計処理は、火災保険などの有無により異なります。このページでは滅失した固定資産に保険金が掛けられていた時の仕訳をご紹介します(滅失した固定資産に保険金が掛けられていない場合は帳簿価額を災害損失に振り替えます。詳細は災害により固定資産が滅失した時の仕訳をご参照ください)。

保険が掛けられている機械や建物などの固定資産が火災などの災害にあったときの会計処理は次の二段階に分けて考える必要があります。

1.災害発生日
固定資産が災害により滅失した段階においては、保険金がいくらもらえるのかがまだ確定していませんのでどのくらいの損失(または利益)が発生したのかがわからない段階にあります。したがって災害が発生した段階においては、固定資産の帳簿価額(取得原価から減価償却累計額を控除した価額)を『災害未決算』または『火災未決算』勘定という資産勘定(流動資産)に振り替えて固定資産が消滅した事実のみを記帳します(未決算勘定は保険金額が確定するまでの仮の勘定科目です)。

仮に、帳簿価額800円(取得原価1,000円 減価償却累計額200円)の建物が火事により焼失した時の災害発生時の記帳は以下のようになります。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額 200 機械 1,000
災害未決算 800

災害未決算勘定は火災未決算勘定などを使用することもあります。なお、滅失した固定資産の減価償却費の計上については、期首(または購入日)から災害により固定資産が使用できなくなった日までの月割額を当期の減価償却費として計上します(上記の説明では簡素化のため当期の減価償却費は考慮していません。詳細は下記具体例をご参照ください)。

2.保険金額確定日
その後、実際に支払われる保険金が確定した時は確定額を『未収金』勘定に振り替えます。この時、実際に支払われる保険金額が計上した未決算より大きいときは差額を『保険差益』という収益(特別利益)勘定で処理し、逆に実際に支払われる保険金額が未決算より小さいときは差額を『災害損失』または『火災損失』という損失(特別損失)勘定で処理することになります。

たとえば、上記1の建物(未決算800円)の保険金確定額が900円の場合は以下のように記帳します。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
未収金 900 災害未決算 800
保険差益 100

いっぽう、上記1の建物(未決算800円)の保険金確定額が700円の場合は以下のように記帳します。

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
未収金 700 災害未決算 800
災害損失 100

上記の災害損失勘定は『火災損失』勘定などとすることもあります。

(具体例1-災害発生時・保険あり)

×1年12月31日において、当社工場で火災が発生し、下記の機械が焼失した。固定資産の焼失に関する仕訳を示しなさい。なお、当社の決算日は毎年3月31日であり、当該機械については800,000円の火災保険が掛けられている。

(火災により焼失した機械)
取得価額:1,000,000円
期首帳簿価額:800,000円(減価償却累計額200,000円)
減価償却:定額法
耐用年数:10年(当該機械は×1年4月1日時点において事業供用から2年を経過している)。
償却率:0.100

(計算過程)
期首から災害発生日までの月数:4月1日から12月31日までの9か月
当期の減価償却費:1,000,000円×0.100×9月/12月=75,000円
災害発生日の簿価(滅失額):800,000円(期首簿価)-75,000円(当期の償却額)=725,000円

(仕訳)
借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額 200,000 機械 1,000,000
減価償却費 75,000
災害未決算 725,000

上記『災害未決算』は『火災未決算』などとすることもあります。機械について火災保険がかかっていますので災害日の機械の帳簿価額をいったん未決算勘定に振り替えます。なお、かけている保険金額よりも固定資産の帳簿価額が上回っている場合は、この段階で保険金を上回っている部分の損失が確定しますので、上回っている部分を損失処理します。
仮に機械にかけられていた火災保険の最高支払額が500,000円の場合はこの500,000円を超える金額はすでに損失が確定しているため以下のように記帳します。

(仕訳-掛けている保険金より帳簿価額の方が大きい場合)
借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額 200,000 機械 1,000,000
減価償却費 75,000
災害未決算 500,000
災害損失 225,000
(具体例2-保険金確定時)

×2年3月31日において、上記1で焼失した機械について、保険金800,000円が支払われることが確定した。

(計算過程)
保険金800,000円-未決算725,000円=75,000円(保険金の方が大きいため保険差益)

(仕訳-保険差益の計上される場合)
借方 金額 貸方 金額
未収金 800,000 災害未決算 725,000
保険差益 75,000

上記の例では、保険金の方が未決算勘定より大きいため差額は『保険差益』(特別利益)として計上しています。

いっぽう保険会社の査定の結果、保険金の支払額が700,000円とされた場合の仕訳は以下のようになります。
(計算過程)
未決算725,000円-保険金700,000円=25,000円(保険金の方が小さいため災害損失)

(仕訳-災害損失が計上される場合)
借方 金額 貸方 金額
未収金 700,000 災害未決算 725,000
災害損失 25,000

上記の例では、保険金の方が未決算勘定より小さいため差額は『災害損失』(特別損失)として計上しています。
『災害損失』は『火災損失』などの勘定科目を使用することもあります。

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