その他有価証券(部分純資産直入法)に係る税効果会計の適用

その他有価証券は、会計上、期末に時価評価を行い、全部純資産直入法または部分純資産直入法により評価差額を直接純資産の部に計上するか、当期の損失として処理します。

一方、課税所得計算上はその他有価証券の評価替えは行われませんので会計と税務との間で差異が生じることから一時差異として税効果会計を適用することが必要となります。

その他有価証券の評価差額の処理方法のうち、部分純資産直入法を採用している場合、税効果会計の適用関係は以下のようになります。

1.評価差益の取り扱い
評価差益に係る繰延税金負債の額をその他有価証券評価差額から直接控除し、その残額を純資産の部に計上することになります(税効果会計に係る会計基準第二・二3、貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準8等参照)。

2.評価差損の取り扱い
評価差損に係る繰延税金資産の額を法人税等調整額を使用して計上します。

(具体例-部分純資産直入法・税効果会計適用)

当期に取得したA株式(その他有価証券)取得価額3,000円の期末時点における市場価格は3,500円であった。また、当期に取得したB株式(その他有価証券)取得価額2,000円の期末時点における市場価格は1,800円であった。期末の評価に関する仕訳を示しなさい。なお法定実効税率は40%として算定すること。

(計算過程)
A株式:500円×40%=200円(評価益であり、繰延税金負債)
B株式:200円×40%=80円(評価損であり、繰延税金資産)

(仕訳-A株式)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 500 その他有価証券評価差額金 500
その他有価証券評価差額金 200 繰延税金負債 200

投資有価証券の評価差益は直接純資産の部に計上されますので、当該評価差額に係る繰延税金負債の金額は当該評価差額から控除して計上することになります(税効果会計に係る会計基準第二・二3参照)。なお上記の仕訳は下記のようにまとめて行うこともできます。

(仕訳・A株式別解)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 500 その他有価証券評価差額金 300
繰延税金負債 200
(仕訳-B株式)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券評価損 200 投資有価証券 200
繰延税金資産 80 法人税等調整額 80

部分純資産直入法を適用した場合の評価差損は、評価差益とは異なり、当期の損失として損益計算書に計上されます。したがって税効果会計を適用する時は『法人税等調整額』を使用して繰延税金資産を計上することになります。

その他有価証券の評価差額は翌期首に振り戻し(再振替仕訳)を行いますので、翌期期首において以下の仕訳を行います。

(仕訳・A株式再振替仕訳)
借方 金額 貸方 金額
その他有価証券評価差額金 300 投資有価証券 500
繰延税金負債 200
(仕訳-B株式再振替仕訳)
借方 金額 貸方 金額
投資有価証券 200 投資有価証券評価損 200
法人税等調整額 80 繰延税金資産 80

なお、法人税等調整額に関する仕訳は期末に行いますので、評価差損に関する再振替仕訳も期末に他の法人税等調整額に関する仕訳とまとめて行う場合もあります。

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