繰越欠損金に対する税効果会計適用時の仕訳

課税所得計算上において生じた欠損金(赤字)はその後9年間の繰越控除が認められています。すなわち、各事業年度開始の日前9年以内に開始した事業年度において生じた欠損金は、その事業年度の課税所得算定上において損金に算入することが可能です(法人税法第57条第1項参照)。

これは繰越欠損金とよばれ、将来の課税所得を減額する効果を持つことから一時差異と同じ税効果を有するものとして一時差異と同様に税効果会計を適用することになります(繰越欠損金は過去の赤字と将来の黒字とを相殺することを認める税法上の制度であり、会計上と課税所得計算上の資産・負債の計上額に差異をもたらすものではありませんので一時差異ではありません。しかし、将来の課税所得を減算するという一時差異と同様の効果があるため、一時差異に準ずるものとして一時差異と同様に取り扱います。なお一時差異と一時差異に準ずるものとを合わせて「一時差異等」といいます。個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針11、12項参照)。

繰延税金資産の計上は当該資産の回収可能性(将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうか)について十分に検討し、慎重に決定しなければなりません(個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針21項)。
特に繰越欠損金に係る繰延税金資産の計上は、当該企業が欠損金を計上したことによるものであることを考慮すると、欠損金が発生した事業年度以後の課税所得の有無をより慎重に見積もり、回収可能性の判断を行う必要があります。

(具体例-繰越欠損金に対する税効果会計の適用)

1.×1年度において当社は支店の統廃合を実施し特別損失1,000,000円を計上し、税務上も欠損金500,000円が発生した。当該損失は非経常的なものであり、これを除けば当社は課税所得を毎期計上している会社に該当するものと判断できる。今後も毎年300,000円の課税所得の計上が見込まれており、繰延税金資産の回収可能性はあると判断されている。繰越欠損金に係る税効果会計適用時の仕訳を示しなさい。なお当社は中小法人には該当せず、繰越控除の限度額は課税所得の80%として算定すること。また法定実効税率は40%で計算する(以下同様)。

(計算過程)
繰延税金資産計上額:500,000円×40%=200,000円

(仕訳・税効果計上時)
借方 金額 貸方 金額
繰延税金資産 200,000 法人税等調整額 200,000

2.×2年において、課税所得300,000円が発生した。なお、×2年度決算期において繰延税金資産の回収可能性の判断についての変更はないものとする。

(計算過程)
税効果解消額:300,000円×80%×40%=96,000円

(仕訳・税効果解消時)
借方 金額 貸方 金額
法人税等調整額 96,000 繰延税金資産 96,000

計上された繰延税金資産の回収可能性は毎決算期ごとに見直し、回収可能性がないと判断された場合、計上されていた繰延税金資産のうち過大となった金額を取り崩します(個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針23項参照)。

なお、中小法人以外の法人(資本金が1億円を超える法人など)については、毎年利用できる繰越欠損金に制限があります。上記設例では課税所得の80%として算定していますが、平成27年4月1日以降開始事業年度は課税所得の65%、平成29年4月1日以降開始事業年度は課税所得の50%として算定しますので該当年度の繰越欠損金についてはご注意ください(資本金が1億円以下の中小法人は課税所得の100%の控除が可能です)。

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