その他有価証券(全部純資産直入法)に係る税効果会計の適用
その他有価証券は、会計上、期末に時価評価を行い、全部純資産直入法または部分純資産直入法により評価差額を直接純資産の部に計上するか、当期の損失として処理します。
一方、課税所得計算上はその他有価証券の評価替えは行われませんので会計と税務との間で差異が生じることから一時差異として税効果会計を適用することが必要となります。
その他有価証券の評価差額の処理方法のうち、全部純資産直入法を採用している場合、有価証券の評価替えに伴って発生した評価差額は直接に純資産の部に計上することになりますが、この場合の当該評価差額に係る繰延税金資産又は繰延税金負債の金額は当該評価差額から控除して計上することになります(税効果会計に係る会計基準 第二・二3、個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針第15項参照)。
なお、評価差額と繰延税金資産・繰延税金負債の関係は以下の通りになります。
評価差益:繰延税金負債(将来加算一時差異) 評価差損:繰延税金資産(将来減算一時差異) |
(具体例-全部純資産直入法・税効果会計適用)
当期に取得したA株式(その他有価証券)取得価格3,000円の期末時点における市場価格は3,500円であった。期末の評価に関する仕訳を示しなさい。なお法定実効税率は40%である。
(計算過程)
A株式:(3,500円-3,000円)×40%=200円(評価益であり、繰延税金負債)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
投資有価証券 | 500 | その他有価証券評価差額金 | 500 |
その他有価証券評価差額金 | 200 | 繰延税金負債 | 200 |
全部純資産直入法を適用した時の評価差額は直接純資産の部に計上されますので、当該評価差額に係る繰延税金負債の金額は当該評価差額から控除して計上することになります。なお上記の仕訳は下記のようにまとめて行うこともできます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
投資有価証券 | 500 | その他有価証券評価差額金 | 300 |
- | - | 繰延税金負債 | 200 |
その他有価証券の評価差額は、翌期首に振り戻し(再振替仕訳)を行いますので、翌期期首において以下の仕訳を行います。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
その他有価証券評価差額金 | 300 | 投資有価証券 | 500 |
繰延税金負債 | 200 | - | - |
なお、評価差損が計上される場合は繰延税金資産を計上することになりますが、全部純資産直入法の場合、仕訳は評価差益が計上された場合と同様、評価差額に係る繰延税金資産の金額は当該評価差額から控除して計上することになります。
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