ストック・オプションの公正な評価単価の変動(条件変更)の会計処理

ストックオプションの公正な評価単価については、ストックオプションの付与日現在において算定し、原則としてその後の変更は行いません(企業会計基準第8号 ストック・オプション等に関する会計基準(以下、ストックオプション会計基準)第6項(1)参照)。
ただし、ストックオプションの行使価格を変更する等の条件変更により、公正な評価単価を変動させた場合には、以下のような処理が必要となります(ストックオプション会計基準第10項参照)。

(ストックオプションの公正な評価単価の変更)
内容
条件変更日の公正な評価単価>付与日の公正な評価単価 条件変更日前の公正な評価単価に基づく費用計上を継続すると同時に、条件変更日の公正な評価単価が条件変更前の公正な評価単価を上回る部分について、追加的な費用計上を行います。
条件変更日の公正な評価単価≦付与日の公正な評価単価 条件変更日以後においても、条件変更前から行われてきた、ストック・オプションの付与日における公正な評価単価に基づく費用計上を継続します。

新たな条件のストック・オプションの付与と引換えに、当初付与したストック・オプションを取り消す場合には、実質的に当初付与したストック・オプションの条件変更と同じ経済実態を有すると考えられる限り、ストック・オプションの条件変更とみなして会計処理を行います(ストックオプション会計基準第10項(2)参照)。

なお、ストックオプションの会計処理の基本的事項に関してはストックオプションの付与時・権利確定日前の会計処理をご参照ください。

(具体例-ストックオプション・公正な評価単価の変更)

3月決算法人である当社は、x1年4月1日に以下の条件でストックオプションを付与した。x2年3月31日および×3年3月31日の仕訳を示しなさい。

(ストックオプションの条件)
・役員及び従業員30人に対し、1人当たり10個(合計300個)のストックオプションを付与
・ストックオプション1個当たり10株の交付が受けられる。
・権利行使価格は1株当たり100円
・ストックオプションの公正な評価単価は1個あたり50円
×2年10月1日において、権利行使価額を1株当たり80円に引き下げた
条件変更日のストックオプションの公正な評価単価は1個当たり60円であった
・権利確定日は×3年9月30日
・権利確定日までの失効見込(退職者見込数は当初0人であったが、×3年3月末時点において1人に修正する)

(計算過程-×2年3月31日)

ストックオプションの付与日から権利確定日までは2年半(30月)であり、このうち×2年3月期の占める割合は1年(12月分)であるため、×2年3月期におけるストックオプションの費用計上額は以下の通りとなります。

ストックオプションの公正な評価額:50円×10個×30人=15,000円
×2年3月期の費用計上額:15,000円×12月/30月=6,000円

(仕訳・×2年3月31日)
借方 金額 貸方 金額
株式報酬費用 6,000 新株予約権 6,000

×2年9月30日に権利行使価格を変更しています。この変更により、ストックオプションの公正な評価単価は50円から60円に増加しています。変更後の評価単価の方が大きくなっておりますので、従来の条件変更前の公正な評価単価に基づく費用計上を継続すると同時に、評価単価の増加部分について、追加的な費用計上を実施します。
(計算過程-×3年3月31日)

(1) 条件変更前の公正な評価単価に基づく費用計上額は×2年3月期と同様となりますので、6,000円となります。

(2) 条件変更後の公正な評価単価の増加部分については以下の通りです。

ストックオプションの公正な評価額(増加分):(60円-50円)×10個×30人=3,000円
×3年3月期の費用計上額:3,000円×6月/12月※=1,500円

※条件変更日から権利確定日までの期間12月のうち、条件変更日から×3年3月決算期までの期間6月の割合で×3年3月期の費用計上額を算定します。

(3) ×3年3月期のストックオプションの関する費用計上額の合計は

6,000円(条件変更前分)+1,500円(条件変更による増加分)=7,500円

(仕訳・×3年3月31日)
借方 金額 貸方 金額
株式報酬費用 7,500 新株予約権 7,500

上記設例とは逆に、条件変更により公正な評価単価が減少した場合は、条件変更前の費用計上を継続します。仮に、上記の設問で条件変更日の公正な評価単価が50円未満であったときは、×3年3月期の費用計上額は条件変更前の費用計上をそのまま継続することになりますので、株式報酬費用は6,000円となります。

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