発生時換算法と期末時換算法(法人税法上の外貨建取引換算法)
1.発生時換算法と期末時換算法
法人税法上、外貨建資産・負債の換算方法には以下の2つの方法があります(法人税法第61条の9第1項参照)。
方法 | 内容 |
発生時換算法 | 期末において、外貨建資産・負債をその取得時または発生時の為替レートで換算する方法 |
期末時換算法 | 期末において、外貨建資産・負債を期末時の為替レートで換算する方法 |
一般的に、上記の発生時換算法はHRでの換算、期末時換算法はCRでの換算に該当します。
2.資産負債別の法定換算方法
外貨建資産・負債については、その資産負債の種類により、上記2つの換算方法のうち適用する換算方法が定められています(法人税法第61条の9第1項参照、法人税法施行令第122条の4・第122条の7参照)。
種類 | 法定 | 選択可 |
短期外貨建債権・債務 | 期末時換算法 | 発生時換算法 |
長期外貨建債権・債務 | 発生時換算法 | 期末時換算法 |
売買目的有価証券 | 期末時換算法 | - |
売買目的外有価証券のうち 償還期限・償還金額あり |
発生時換算法 | 期末時換算法 |
売買目的外有価証券のうち 償還期限又は償還金額なし |
発生時換算法 | - |
短期外貨預金 | 期末時換算法 | 発生時換算法 |
長期外貨預金 | 発生時換算法 | 期末時換算法 |
外国通貨 | 期末時換算法 | - |
上記資産負債のうち、「短期」は事業年度終了の日の翌日から一年を経過した日の前日までに期限到来する債権債務などをいい、「長期」はこれを超えて期限が到来する債権債務をいいます。
なお、法人税法上の法定換算方法と外貨建取引等会計処理基準の換算方法との差異については、下記届出を行い選択可能換算方法を選択することにより一致させることができます(ただし、売買目的外有価証券のうち償還期限・償還金額なしのもの(会計上のその他有価証券)については税務上はHR換算のみとなっており、会計上求められるCR換算との差異が残ることになり、申告調整が必要です)。
3.換算方法の選択と変更
法人が事業年度終了の時において有する外貨建資産等についての換算方法は、その外国通貨の種類ごとに、かつ、上記の外貨建資産等の区分ごとに選定しなければなりません(2つ以上の事業所を有する場合は、事業所ごとに換算の方法を選定することができます。 法人税法施行令第122条の4参照)。
これらの選択は、新たな資産・負債を取得した日の属する事業年度の申告期限までに届け出る必要があります(法人税法施行令第122条の5参照)。
もし届け出なかった場合は上記の法定換算方法により換算を行うことになります(法人税法施行令第122条の7参照)。
なお、いったん採用した換算方法を変更する場合は、新たな換算方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに、その旨、変更しようとする理由その他の事項を記載した申請書を提出する必要があります。ただし、一旦採用した換算方法は特別の事情がない限り継続して適用すべきものですから、その換算の方法を採用してから相当の期間(3年)を経過していないときは、その変更が特別な理由があるときを除き、変更は認められません。また3年を経過した後になされた場合であっても、その変更することについて合理的な理由が必要です(法人税法施行令第122条の6、法人税法基本通達13の2-2-15参照)。
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