保険期間の長い定期保険に関する仕訳(長期平準定期保険)

通常の定期保険はその期間の経過に応じて損金(税務上の費用)として処理しますが、以下の条件をすべて満たす定期保険(長期平準定期保険)については、税務上は特別の扱いが必要となります(昭和62年6月16日直法2-2、国税庁HP「ホーム-法令解釈通達-法人税関係 個別通達目次-「法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて」など参照)。

(長期平準定期保険)
1.保険期間満了の時における被保険者の年齢が70歳を超える
2.当該保険に加入した時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が105を超える

2の条件について、以下のように算定します

(ケース1)
保険加入時が40歳、保険期間満了時が75歳の場合

被保険者の年齢40歳+保険期間(75歳-40歳)×2=110
よって、上記の算式の値が105を超えるため長期平準定期保険に該当します。

(ケース2)
ケース2:保険加入時が50歳、保険期間満了時が75歳の場合

被保険者の年齢50歳+保険期間(75歳-50歳)×2=100
よって、上記の算式の値が105に満たないため長期平準定期保険には該当しません(通常の定期保険となります)

通常の定期保険の場合には、時の経過により支払った保険料が費用(支払時の損金など)として扱われることにないますが、定期保険が長期平準定期保険に該当する場合、税務上の取り扱いに応じて以下のように処理する必要があります。

(定期保険の会計処理)
期間 税務上の扱い 経理処理
保険期間の開始から保険期間の60%に相当する期間まで 支払保険料の2分の1に相当する金額を資産とし、のこりの2分の1に相当する金額を損金とする 『前払保険料』に1/2
『保険料(費用)』に1/2
保険期間の60%経過時から満了までに相当する期間まで 支払保険料の額を一般の定期保険の保険料と同様に全額を損金の額に算入するとともに、上記で資産に計上した前払保険料の累積額をその期間の経過に応じ取り崩して損金の額に算入する(均等按分)。 保険料の支払額と前払保険料の取崩額をともに『保険料(費用)』として処理

保険事故は若い世代ほど起こる可能性が低く、年齢を重ねるにしたがってその可能性は大きくなっていきます。したがって保険金の支払額が平準化されている定期保険などでは、保険事故の可能性の低い保険期間の前半において支払う保険料の中には、保険事故の可能性が高くなる保険期間の後半に係る前払保険料が含まれているとかんがえられます。特に保険期間が長期にわたる定期保険(長期平準定期保険)については、当該保険の保険期間の前半において支払う保険料の中に相当多額の前払保険料が含まれていると考えられることから、その支払保険料の損金算入時期等に関する取扱いの適正化を図ることを目的として上記のような取扱いが定められています。

(具体例-長期平準定期保険の税務上の取り扱いを前提とした仕訳)

×1年1月1日(期首)にA社員を被保険者として加入した以下の定期保険について、×1年1月1日および×30年1月1日における仕訳を示しなさい

(定期保険の条件)
保険契約者:当社
被保険者:A社員
保険金受取人:当社
保険契約時である×1年1月1日におけるA社員の年齢は40歳
保険期間は40年であり、保険満了時におけるA社員の年齢80歳。
保険金は毎年1月1日に1年分の保険料10,000円を現金で前払いする

1.×1年1月1日における仕訳

この保険は長期平準定期保険に該当しますので(上記ケース1の場合を参照ください)、一般の定期保険とは区分して処理する必要があります。
長期平準定期保険とされた場合、保険期間の60%を経過するまでは支払った保険料の半分を経費(損金)、もう半分を資産(前払保険料)として処理することになりますので、×1年1月1日における仕訳は以下のようになります(保険期間の60%を経過するまでは同様となります)

(仕訳-×1年1月1日)
借方 金額 貸方 金額
保険料 5,000 現金 10,000
前払保険料 5,000

2.×30年1月1日における仕訳

保険契約後25年間が経過していますが、この保険の保険期間は全体で35年となっていますので、この時点においてはすでに保険期間の60%を経過していることになります(40年×60%=21年ですので、×24年12月31日をもって60%を経過します)。
長期平準定期保険においては、保険期間の60%を経過したあとで支払った保険料はその全額を経費(損金)として処理するとともに、60%経過時までに積み立てた前払保険料(資産)を残りの期間で均等に取り崩し、これを経費として処理することになります。

なお60%経過時までの毎年の積立額は5,000円、これが24年分となりますので、60%経過後の毎年の取崩額は以下のように計算します。

積立額の合計:毎年の積立額5,000円×24年=120,000円
取り崩し額:積立額合計120,000円÷(40年-24年)=7,500円

(仕訳-×30年1月1日)
借方 金額 貸方 金額
保険料 17,500 現金 10,000
前払保険料 7,500

なお、保険期間中に保険事故が発生し、企業が保険金を受け取った時は以下のようにそれまでに積み立てた前払保険料の残高を取り崩し、受取額との差額を収益として処理します。

(仕訳-保険金受取時)
借方 金額 貸方 金額
現金預金 保険金受取額 前払保険料 残高
雑収入など 差額

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