食事手当における源泉所得税・社会保険料の算定

1. 所得税(源泉所得税)に関する食事手当の取り扱い

食事手当とは、従業員や役員などの食費を補助する目的で支給する手当であり、支給する形態には現物支給(仕出し弁当を支給する場合や社員食堂での提供)や現金支給など様々な形があります。

食事手当は、残業手当や時間外手当などと同様、支給を受ける役員や従業員の給与所得として所得税の課税対象となり、源泉所得税を算定する際には食事手当として支給された価額も含めて、課税額を算定する必要があります。
ただし、会社が食事を提供する場合であり(現物支給)、かつ以下の2つの要件をどちらも満たしている場合に限り、非課税の所得として所得税(源泉所得税)の課税対象としないことができます(所得税法基本通達36-38の2参照)。

(非課税となる食事手当)
1.役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること
2.会社の負担額(食事の価額-役員や使用人が負担している金額)が1か月当たり3,500円(税抜き)以下であること

なお、食事の価額とは次のいずれかの金額をいいます(所得税法基本通達36-38参照)。

・会社が社員食堂などで調理して支給する食事→その食事の材料等に要する直接費の額に相当する金額
・会社が仕出し弁当などを購入して支給する食事→その食事の購入価額に相当する金額

ただし、会社が残業や宿日直を行うものに支給する食事については、金額による制限はなく、無料で支給しても全額を非課税として処理することができます(所得税法基本通達36-25参照)。

上記はすべて食事を提供する場合(現物支給)に関してのみ適用される非課税所得となります。
食事手当として金銭を支給する場合は、会社が深夜勤務者(午後10時から翌日午前5時)に対し夜食の支給ができないため、1食当たり300円(税抜き)以下の金額を支給する場合に限り、その支給する金銭を非課税として扱ってもよいことになっています(その他の場合の金銭支給については、課税対象となります。昭59年7月26日 直法6-5)。

2. 社会保険(標準報酬月額)に関する食事手当の取り扱い

源泉所得税算定における食事手当の取り扱いと社会保険における標準報酬月額算定における食事手当の取り扱いとは大きく異なります。

社会保険に係る標準報酬月額を算定する際の食事手当(現物支給)の取り扱いについては、「従業員などの負担額」と「食事で支払われる報酬等(厚生労働大臣が定める現物給与価額であり、都道府県ごとに金額が決まっています)」に2/3を乗じた金額とを比較し、従業員などの負担額の方が大きい場合には、現物による食事の供与はないものとして扱うことになりますが、従業員負担額の方が小さい場合には、現物給与価額から従業員負担額を控除した金額が現物による食事の供与として標準報酬月額に加算されます。

・従業員負担額≧現物給与価額×2/3の場合、食事による現物供与は0円
・従業員負担額<現物給与価額×2/3の場合、食事による現物供与は現物給与価額-従業員負担額

例えば、
北海道内の企業において、1か月あたりの従業員の食事負担金が10,000円、1か月あたりの現物給与価額(北海道における1か月あたりの食事で支払われる報酬額・平成27年4月以降参照)を17,700円とした場合、現物による食事の供与として標準報酬月額に含まれる金額は以下のようになります。

従業員負担額:10,000円
現物給与価額×2/3:17,700円×2/3=11,800円

従業員負担額10,000円<現物給与価額×2/3の11,800円

∴現物給与価額17,700円-10,000円=7,700円が食事手当として標準報酬月額に含まれます。
(仮に従業員負担額が12,000円の場合には、従業員負担額のほうが大きくなるため、食事手当として標準報酬月額に含まれる金額は0円となります)

なお、食事手当を現金で支給する場合にはその全額が標準報酬月額に含まれることになります(通勤手当などと同じ扱いになります)。

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