ストックオプション費用計上期間を変動させる条件変更の会計処理

ストック・オプションについて、対象勤務期間の延長又は短縮に結びつく勤務条件の変更等により、費用の合理的な計上期間を変動させた場合には、当該条件変更前の残存期間に計上すると見込んでいた金額を、以後、合理的な方法(残存期間にわたる期間按分など)に基づき、新たな残存期間にわたって費用計上することになります(企業会計基準第8号 ストック・オプション等に関する会計基準(以下、ストックオプション会計基準)第12項参照)。

(ストックオプションの費用計上期間の変更時の会計処理)
内容
条件変更前 条件変更前の対象勤務期間にわたって費用計上します
条件変更日後 当初、条件変更日後において費用計上される予定であった金額を、条件変更日から変更後の対象勤務期間にわたって期間按分するなどの方法により費用計上します。
(具体例-ストックオプション・費用の合理的な計上期間を変動させる条件変更)

3月決算法人である当社は、x1年7月1日に以下の条件でストックオプションを付与した。x2年3月31日および×3年3月31日の仕訳を示しなさい(×2年決算期以降の追加条件も参照の事)。

(ストックオプションの条件)
・役員及び従業員30人に対し、1人当たり10個(合計300個)のストックオプションを付与
・ストックオプション1個当たり10株の交付が受けられる。
・権利行使価格は1株当たり100円
・ストックオプションの公正な評価単価は1個あたり50円
・権利確定日は×3年6月末である
・権利確定日までの失効見込は0とする

(計算過程-×2年3月31日)

ストックオプションの付与日から権利確定日までは2年(24月)であり、このうち×2年3月期の占める割合は9月分であるため、×2年3月期におけるストックオプションの費用計上額は以下の通りとなります。

ストックオプションの公正な評価額:50円×10個×30人=15,000円
×2年3月期の費用計上額:15,000円×9月/24月=5,625円

(仕訳・×2年3月31日)
借方 金額 貸方 金額
株式報酬費用 5,625 新株予約権 5,625

ストックオプションの追加条件:当社の株式について、ストック・オプションの付与日から×2年3月末まで株価は、行使価格を大きく下回る価格で低迷し、ストックオプションのインセンティブ効果は大幅に失われた。そのため、権利者のインセンティブを再び向上させるため、X2年6月の株主総会において行使価格を1株当たり50円とし、加えてストック・オプションの権利確定日を×4年6月末に延長した。なお、条件変更日(×2年7月1日)のストックオプションの公正な評価単価は1個当たり80円であった。

(計算過程-×3年3月31日)

(1) 条件変更前の期間(×2年6月まで)は条件変更前の計算を継続しますので

ストックオプションの公正な評価額:50円×10個×30人=15,000円
付与日から×2年6月期の費用計上額:15,000円×12月/24月=7,500円
上記のうち当期の費用計上額:7,500円-5,625円=1,875円

(2) 条件変更後は、付与時において条件変更日後の期間に費用計上される予定であった金額を、条件変更日から変更後の期間にわたって費用計上します。

ストックオプションの公正な評価額:50円×10個×30人=15,000円
条件変更日から×3年3月末までの費用計上額:(15,000円-5,625円-1,875円)×9月/24月※=2,813円

※条件変更日(×2年7月)から条件変更後の権利確定日(×4年6月)までの期間は24月、うち×3年3月期の含まれる期間は9月です。

(3) 条件変更による価値増加分は条件変更日から新しい権利確定日までの期間に応じて費用計上します

ストックオプションの公正な評価額の増加額:(80円-50円)×10個×30人=9,000円
増加分に係る当期の費用価額:9,000円×9月/24月=3,375円

(4) 当期の費用計上額は上記の合計額であり

1,875円+2,813円+3,375円=8,063円

(仕訳・×3年3月31日)
借方 金額 貸方 金額
株式報酬費用 8,063 新株予約権 8,063

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