共通支配下等の取引の基本的な考え方

1.「共通支配下の取引」とは

「共通支配下の取引」とは、結合当事企業(又は事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合をいいます(企業結合に関する会計基準 第16項参照)。
たとえば親会社と子会社の合併や子会社同士の合併などは企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配されるものですので、共通支配下の取引に含まれます(関連会社との企業結合は、企業結合の前後で同一の株主により「支配」されるとは解されないため、共通支配下の取引には該当しません。企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第201項等参照)。

2.「同一の株主」によって支配されている判定基準

上記のとおり共通支配下の取引とは、結合当事企業のすべてが、企業結合の前後で「同一の株主」により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合をいいます。この「同一の株主」により支配されている会社の判定にあたっては、支配力基準が適用されます。すなわち、ある株主と緊密な者(自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者)及び同意している者(自己の意思と同一の議決権を行使することに同意している者を)が保有する議決権を合わせて、結合当事企業のすべてが、企業結合の前後で「同一の株主」により最終的に支配されているかを実質的に判定することになります(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第202項等参照)。

3.共通支配下の取引の会計処理の基礎

企業集団内における組織再編(共通支配下の取引等)の会計処理には、共通支配下の取引と非支配株主との取引があります。共通支配下の取引と非支配株主の会計処理は原則として以下の通りとなります(企業結合に関する会計基準 第41項以下参照)。

(共通支配下の取引の基本処理)
個別会計上の処理 ・共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産及び負債は、原則として、移転直前に付されていた適正な帳簿価額により計上する。

・移転された資産及び負債の差額については、純資産の増加として処理する。

・移転された資産及び負債の対価として交付された株式の取得原価は、当該資産及び負債の適正な帳簿価額に基づいて算定する。

連結会計上の処理 共通支配下の取引は、企業集団内における内部取引としてすべて消去する。
(非支配株主との取引の基本処理)
個別会計上の処理 非支配株主から追加取得する子会社株式の取得原価は、追加取得時における当該株式の時価とその対価となる財の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で算定する。
連結会計上の処理 非支配株主との取引については、連結会計基準における子会社株式の追加取得及び一部売却等の取扱いに準じて処理する。

たとえば親会社が100%子会社を吸収合併する場合の個別会計処理を考えた場合、子会社は合併期日の前日に決算を行い、資産、負債及び純資産の適正な帳簿価額を算定します。親会社は合併期日に当該適正な簿価をもって、当該子会社の資産・負債を受け入れるための処理を行います。
また親会社は、子会社から受け入れた資産と負債との差額と親会社が合併直前に保有していた子会社株式(抱合せ株式)の適正な帳簿価額とを相殺し、これらの差額については特別損益(抱き合わせ株式消滅損益)として計上することになります。
いっぽう、連結会計上は親会社が子会社を合併する取引は企業集団内の内部取引に該当するため、これを消去することになります(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針第205項以下参照参照)。

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